「傍観者効果」は、社会心理学用語で、集団心理のうちの一つです。まず、結論から言ってしまうと、「傍観者効果」とは、自分以外に傍観者(他者)がいる時に率先して行動を起こさなくなる心理効果をいいます。
簡単にお伝えすると、あなたの周りにたくさんの人がいることで、援助行動が抑制されてしまうという集団心理を言います。
この記事では、「傍観者効果」の意味を解説しながら、仕事やいじめで働く例や実験、英語表現、対策方法、論文などを紹介していきます。
最後まで読むことで、身近で活用されている例を知ることができ、あなたも傍観者効果の理解を深めることができるでしょう!
「傍観者効果」の意味とは?
「傍観者効果」の意味は、「自分以外に傍観者(他者)がいる時に率先して行動を起こさなくなること」
「傍観者効果」とは、自分以外に傍観者(他者)がいる時に率先して行動を起こさなくなるという心理効果を言います。
「傍観者効果」の実験とは?
「傍観者効果」の実験について解説します。
「傍観者効果」の実験は「ダーリー」と「タラネ」の2人で1968年に行わました。
「傍観者効果」の実験概要
「ダーリー」と「タラネ」は、「キティ・ジェノヴィーズ事件」について周りの人がこの殺人事件を気づいていたのにもかかわらず、誰も被害者を助けようとしなかったことに注目を置き、調査を開始しました。
◆キティ・ジェノヴィーズ事件
キティ・ジェノヴィーズ事件は、1964年にアメリカのニューヨークで起こった殺人事件のことです。この事件がきっかけで、この「傍観者効果」が提唱されました。社会心理学では有名なエピソードです。
「傍観者効果」の実験内容
この実験では、ニューヨーク大学の学生を対象に行われました。
まず、学生に集団討論(大規模なディベート)に参加してもらう機会を作り、この討論中に、学生のうちの1人が発作を起こしてしまうという緊急事態を作り出しました。
学生は、以下の3つのグループにわかれます。
- 2名グループ
- 3名グループ
- 6名グループ
上記の3つのグループに分かれて、1人ずつ個室に移動し、マイクとインターホンを使って、それぞれ順番に発言し、討論を行うことの説明を受けます。
その説明を受けている最中に、参加者のうちの1人が突然苦しみ出し、助けを求めます。
しかし、発言の持ち時間が終了してしまい、マイクが切れてしまうという緊急事態を起こします。
実際には、被験者以外の参加者はいないので、すべてテープに録音されたものです。
だが、被験者は自分たち意外にも討論に参加している人がいると勘違いしています。
その中で、この作り出した緊急事態を被験者が廊下にいる実験者に知らせるかどうか、また知らせた場合にどのくらいの時間がかかったのかを計測していきました。
「傍観者効果」の実験結果
この実験の結果、2名のグループでは、自分たちしか参加者がいないと思っていたため、廊下にいる実験者に迅速に報告する結果となりました。
しかし、6名グループのように他の参加者もいると思っている場合には、報告率が圧倒的に低く、報告した場合でもかんりの時間がかかってしまったのです。
またこの実験により、キティ・ジェノヴィーズ事件は「たくさんの人見ていた」ことから誰も助けなかったということがわかったのです。
この「傍観者効果」は人間の心理であることから、未然に防ぐことは不可能であると言えます。
今後、社会はこの「傍観者効果」が働かないようなシステム作りをしていく必要があると言えるでしょう。
「傍観者効果」の原因とは?
生じてしまう原因を解説していきます。
「傍観者効果」の「責任の分散」
「傍観者効果」の「責任の分散」は、自分がしなくても周りにいる人が行動するだろうと、他者と同じ行動をすることで、責任や非難が分散されていくだろうと判断してしまうことです。
つまり、人は周りに他者がいるだけで、「自分がやらなくても他者がやるだろう」という心理が働き、行動を起こしにくくなってしまうのです。
「傍観者効果」の「聴衆抑制」
「傍観者効果」の「聴衆抑制」は、援助行動が抑制されてしまうということです。その理由は、行動を起こして失敗してしまったら、他者の悪い評価から、援助行動を制限されてしまうということです。
つまり、アクションを起こした場合、その結果が周りからネガティブな評価を受けてしまうだろうと遅れてしまうことです。
「傍観者効果」の「多元的無知」
「傍観者効果」の「多元的無知」は、周りの人が何もしてないから、急いで援助や介入することが必要ではないだろうと誤って判断してしまうことです。
つまり、他者が積極的に行動しないことにより、その事態は緊急性を必要としてないと考えてしまうのです。
「傍観者効果」の例
「傍観者効果」の具体例を解説します。
学校や仕事のいじめ
例えば、誰かがじめの対象になっているのにもかかわらず、自分には関係ないからと言って「自分は無関係」という立場になってしまうことです。
他者が嫌に思っている、悲しんでいるのにもかかわらず、手を差し伸べる行動をしなかった場合は「傍観者効果」が働いています。
つまり、「見て見ぬふりをしてしまう行動」これが「傍観者効果」です。
電車やバスで高齢者に席を譲ろうとできないとき
電車やバスで高齢者が乗車してきた時、「譲ろう」と思っても、周りからどう思われるかわからないし…高齢者に失礼では…?と考えてしまう人がいるのではないでしょうか?
これも「傍観者効果」が働いています。
立場が上の人がいる中で自分の意見を主張できないとき
会議などの場面で、自分の意見を主張できない時も「傍観者効果」が働いていると言えます。
発言することで、周りがどう思うか不安になってしまいますよね。
ネガティブな印象を思われたくないために、このような行動をとってしまうのが人間の心理です。
「傍観者効果」の対策方法とは?
「傍観者効果」の対策方法も解説します。
自分が傍観者にならない
誰か1人が動けば、周りも同調します。
なので、まずは自分が傍観者にならないことです。
自分から行動することを心がけましょう。
事態の緊急性を他者に伝える
あなたがいじめなどで悩んでいるとするなら、言いにくいことは承知ですが、他者に助けを求めましょう。
誰かに向けて助けを求めることで、助けを求められた人は傍観者ではなくなるからです。
「傍観者効果」の英語表現とは?
「傍観者効果」の英語表現を解説します。
「傍観者効果」は英語で「Bystander Effect」
「傍観者効果」は英語表記で「Bystander Effect」と表記します。
「傍観者効果」は英単語の「Bystander」と効果の意味を持つ「Effect」から由来している名前ですが、「Bystander」とはどういう意味を持つのでしょうか?
「Bystander」とは以下の意味を持ちます。
- 傍観者
- 居合わせた人
以下では、「Bystander」を使った英語例文を紹介します。
- an uninvolved bystander(無責任な傍観者)
「傍観者効果」の論文とは?
ここでは「傍観者効果」の論文をまとめておきます。
援助行動に関する実験的研究
- 名前:原田 純治
- 収録刊行物:心理学研究
援助行動に関する実験的研究
- 名前:星田 昌紀
- 収録刊行物:経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
まとめ
さいごに、この記事でお伝えしたことをまとめると以下の通りです。
- 「傍観者効果」とは、自分以外に傍観者(他者)がいる時に率先して行動を起こさなくなる心理効果
- キティ・ジェノヴィーズ事件は、1964年にアメリカのニューヨークで起こった殺人事件
- 「傍観者効果」は英語で「Bystander Effect」
「傍観者効果」の心理の反対行動を起こすには、自ら行動する必要があります。
勇気のいる行動ですが、誰かが動かないと動かないというのが人間の心理なので、あなたが先陣を切って行動するようにしましょう!
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