「おとり効果」は、スマホの値段やランチセットの種類などさまざまな場面で活用されている心理学用語です。まず結論から言ってしまうと、「おとり効果」とは、顧客に選らばれる可能性の低い商品(おとり)をあえて入れ売りたい商品を選ぶよう顧客の意思決定をコントロールする心理効果を言います。
簡単に説明すると、選ばれないであろう商品を提示することで顧客の意思決定に影響を与える心理効果を意味します。人間の心理を利用した「おとり効果」はさまざまな場面で働いており、マーケティングでは顧客に気付かれず陽動することができるため効果的とされています。
この記事では、「おとり効果」の意味や語源などを解説しながら、実験や類語、英語表現、具体例、広告やマーケティングで使う方法などを紹介していきます。
一読することでマーケティング職で働いている人は「おとり効果」を活用し、顧客の意思決定に影響を与えればお店の利益向上に繋がるでしょう!
「おとり効果」の意味とは?
まず、「おとり効果」の意味についてご紹介します!
おとり効果
意味:顧客に選らばれる可能性の低い商品(おとり)をあえて入れ売りたい商品を選ぶよう顧客の意思決定をコントロールする心理効果。
「おとり効果」の意味は、「顧客の意思決定をコントロールできる」
「おとり効果」とは、顧客に選ばれる可能性の低い商品(おとり)をあえて入れ売りたい商品を選ぶよう顧客の意思決定をコントロールする心理効果を言います。
例えば、AとBの選択肢の間でどちらかで迷っている顧客に対して、「どちらかに対して明らかに劣った」Cの選択肢(おとり)を提示した場合に、顧客がAとBのどちらかを選択するということです。
行動経済学との関係性
「おとり効果」は行動経済学と深く関わっており、意思決定に影響を与えることからマーケティングにおいて多く使われています。
「松竹梅コース」のように高額・低額な商品で売りたい商品を挟む方法も「おとり効果」を狙ったものとなっています。
上記の「松竹梅コース」は「松竹梅の法則」という心理効果からきており「おとり効果」に関わっているので一緒に覚えておきましょう。
- 「おとり効果」の意味は、顧客に選ばれる可能性の低い商品(おとり)をあえて入れ売りたい商品を選ぶよう顧客の意思決定をコントロールする心理効果。
「おとり効果」の語源と由来とは?
「おとり効果」の由来は以下の通りです。
「おとり効果」の由来は、「明らかに本命ではないものとなる選択肢」を紛れ込ませることから、「おとり効果」と呼ばれるようになりました。
「おとり効果」の実験とは?
「おとり効果」では以下のような実験が行われました。
「おとり効果」の実験概要
「おとり効果」はエコノミスト誌の広告を使った実験をダン・アリエリーによって行われました。
「おとり効果」の実験内容
「おとり効果」を使った広告の場合には、
- web閲覧のみ:59ドル
- 紙媒体のみ:125ドル
- web閲覧+紙媒体:125ドル
と3つの選択肢を与えました。
「おとり効果」を使わなかった広告の場合には、
- web閲覧のみ:59ドル
- 紙媒体のみ:125ドル
と2つの選択肢を与えたところ、どちらに魅力を感じたのかインタビューを行いました。
「おとり効果」の実験結果
この実験の結果、「おとり効果」を使わなかった場合は、紙媒体のみが68%、「おとり効果」を使った場合はweb閲覧+紙媒体が84%も選ばれました。
つまり、「おとり効果」を使うことで売上の向上に効果的と証明されています。
「おとり効果」の類語とは?
「おとり効果」は吸引効果、非対称優性効果、対称的支配とも呼ばれており、似ている心理学には以下のような心理学があります。
「おとり効果」の類語は「松竹梅の法則」
松竹梅の法則
意味:三段階の選択肢があったときに、たいていの人は真ん中を選ぶ心理効果。
「松竹梅の法則」とは、三段階の選択肢があったときに、たいていの人は真ん中を選ぶという心理効果を言います。
「松竹梅の法則」は、行動経済学において「妥協効果」や「極端の回避性」とも呼ばれているので、一緒に覚えておくといいでしょう。
松竹梅の法則をマーケティングで応用することができれば、あなたの売り上げは伸びるはずです。
- 「おとり効果」の類語には、「松竹梅の法則」がある。
「おとり効果」の英語表現とは?
続いて、「おとり効果」の英語表現を解説します。
「おとり効果」は英語で「Decoy Effect」
「おとり効果」は英語表記で「Decoy Effect」と表記します。
「おとり効果」は英単語の「Decoy」と効果の意味を持つ「effect」から由来されていますが、「Decoy」とはどのような意味を持つのでしょうか?
「Decoy」は以下の意味を持ちます。
- おびき寄せる
- 誘惑する
以下では、「Decoy」を使った英語例文をご紹介します。
<例文>
- a police decoy(おとりの刑事)
- to decoy one out―lure one out(おびき出す)
- 「おとり効果」は英語で「Decoy Effect」
「おとり効果」の例とは?
「おとり効果」という心理用語は、具体的にどの場面で利用されているのかは以下の通りです。
おとり効果はスマホの値段で使われている
「おとり効果」の具体例としてスマホが挙げられます。
例えば、売りたいスマホの値段は4万円で、容量は30GB、他の企業のスマホは3万円と安いが、容量が20GBだったとします。
顧客は、大容量のスマホが良いと思う半面、少量でも安いスマホを購入したいという気持ちがあるため上記の売りたいスマホと他の企業のスマホで迷い決断を決めることができなくなります。
そこで、上記の2つの選択肢に「おとり」を入れます。
おとりのスマホの値段は4万5千円で容量は25GBと明らかに劣った選択肢を入れることで売りたい商品が優先的になり選ばれるようになります。
- 選択肢に「おとり」を取り入れる。
おとり効果はランチセットの種類で使われている
昼食のランチセットでも「おとり効果」を活用することができます。
例えば500円のランチセットを売りたい場合、300円のランチセットと少し高額な900円のランチセットで売りたい500円のランチセットを挟むことで500円のランチセットが選ばれやすくなります。
ランチセットはセットにすることでより特徴を伝えやすくなるので、売りたい商品を売ることができます。
- 料理などのコースなどは、「セット」にすることで売りたい商品やサービスを提供することができる。
おとり効果は仕事で使われている
仕事での「おとり効果」では、企画などを提案する場面で活用することができます。
1つの案を提案するだけでは、その案が採用される確率が低くなるため、採用されたい案と他の捨て案を用意することで採用される確率が高くなるというわけです。
- 仕事で何かを提案するときには、複数用意すると良い。
「おとり効果」の対処法とは?
「おとり効果」を使う側ではなく、使われる側の立場で対処法を紹介していきます。
単価を計算する
選択肢が与えられたときに、まずは単価を計算しましょう。
そうすることで、本当に必要な単価なのかを考えることができます。
さらに、そのものの質や価値を理解することができるので、単価を計算することをおすすめします。
本当に自分に何が必要なのかを分析する
単価を計算したのちに、それが本当に自分に必要なのかを考えましょう。
自分の目的に必要のないものは時間をかけて考えること推奨します。
- 対処法は、単価を計算し、それが本当に必要なのかを分析する。
「おとり効果」を恋愛で使う方法とは?
あなたが合コンや婚活パーティー、お見合いなどに参加したときに「気になる異性を惹きつけたい」と思ったときに「おとり効果」を使うことができます。
「おとり効果」を恋愛で活用する具体例
例えば、
- 身体的な特徴があなたと同じで(肌色、体型、目鼻立ち、身長)、あなたより少しだけ魅力的ではない友人を連れて行く
と効果的です。
なぜなら、比較する人が「友人」になるからです。
そうすることで、相対的に判断するようになります。
つまり、勝手に2人のペアで基準が発生し、「似ているけど少し異なっていて良い方」という方が相手から好印象になるからです。
比べる対象がなければ、2人で来ている人が良いかどうかわかりにくいですよね。
似ている2人で1人が良い部分があれば、「そっちの方が魅力的!」となるはずです。
この「おとり効果」を使った恋愛テクニックは性格が悪いと思われてしまうことが多いですが、恋愛は手に入れたもの勝ちなので、ぜひ試してみてくださいね!
- 合コンや婚活などに参加するときには、身体的な特徴があなたと同じで(肌色、体型、目鼻立ち、身長)、あなたより少しだけ魅力的ではない友人を連れて行くと良い。
「おとり効果」を恋愛で使うときの注意点
ヒトは比べやすい対象物があれば、無意識に比較してしまいます。
ただ、比べにくいものがあると無視してしまう傾向があることを頭に入れておいてください。
つまり、連れて行く友人が「極端にモテない人」であると比較をすること事態を避けてしまうので、連れて行く友人を見極めることが大切です。
また、外見だけでなく、コミュニケーションスキルも必要です。
連れて行く友人が会話上手や褒め上手で、あなたが苦手だった場合、友人が好かれてしまう可能性があります。
そのため、コミュニケーションスキルもあなたと同様な人を誘って恋活や婚活を行いましょう!
- 連れて行く友人を見極めることが大切。
- あなたにコミュニケーションスキルが必要。
「おとり効果」を広告・マーケティングで使う方法とは?
「おとり効果」をマーケティングで使う方法にはいくつかポイントがあります。
商品のラインナップは「3〜5個」の選択肢を用意する
まず、商品のラインナップは3~5がいいとされています。
人間は比較するとき、バリエーションが多くあると、「決定回避の法則」が働くとされ、選ぶのをやめる可能性が高い傾向にあります。
エネルギーを使い、選択にストレスを感じることで選択をしなくなるため、商品には3~5と比較対象を少なくするように意識しましょう。
他にも、価格設定が重要とされており、間違えて提示すれば売り上げには繋がらなくなります。
価格設定は、「松竹梅の法則」を使い「極端の回避性」という心理効果を利用しましょう。
比率は、松:竹:梅=5:3:2で価格を設定すれば顧客の意思決定に影響を与えることができます。
さらに、商品の価格は、高価な商品から順に低価の商品へと表示する方法が良いとされています。
上記には「アンカリング効果」が働いており、より売りたい商品を選びやすくなるでしょう。
- 人間は比較するとき、バリエーションが多くあると、「決定回避の法則」が働くとされ、選ぶのをやめる可能性が高い傾向にあるので、商品のラインナップは「3〜5個」の選択肢を用意すると良い。
「おとり効果」の成功事例とは?
「おとり効果」を利用して成功したパン屋の成功事例を紹介します。
自動パン焼き機の例
家庭用品を販売している「ウィリアムズ・ソノマ社」は自動パン焼き機を開発しました。
しかしながら、開発された当時は、流行りに敏感な消費者がいなかったため、全く売れなかったのです。
そこで、「ウィリアムズ・ソノマ社」は50%増しの質が向上した製品を新たに発売する戦略をとったのです。
そうすることで、選択肢ができて、最初に開発した自動パン焼き機が爆発的に売れるようになりました。
これは「おとり効果」が働いている例で、2つの選択肢が生まれ、消費者が2つの商品を相対的に判断し、コスパなどの点から、安い自動パン焼き機を購入するようになったのです。
「おとり効果」を使うときの注意点とは?
「おとり効果」は顧客に気付かれずに陽動できるため上手く取り入れることができればお店の利益向上に繋がります。
「おとり効果」のダークパターンにも注意する
売りたい商品を特定しないまま選択肢を用意しても効果は発揮されません。
売りたい商品を明確にしそれに合わせて選択肢を用意しましょう。
また、売りたい商品やサービスが選ばれたとしても価格に見合ったものでなければ顧客の信頼はなくなります。
その場合、一時的に利益があがるだけで、リピーターを獲得することができないため、商品やサービスの価値と価格を合わせ提供するようにしましょう。
- 売りたい商品を明確にしそれに合わせて選択肢を用意する。
まとめ
さいごに、この記事でお伝えしたことをまとめると以下の通りです。
- 「おとり効果」とは、顧客に選らばれる可能性の低い商品(おとり)をあえて入れ売りたい商品を選ぶよう顧客の意思決定をコントロールする心理効果
- 「おとり効果」の類語・言い換え表現は、「松竹梅の法則」
- 「おとり効果」の英語表記で”Decoy effect”と表記
- 「おとり効果」をマーケティングで使う際は、商品のラインナップは3~5がいい
「おとり効果」は顧客の意思決定に影響を与えるため、マーケティングにおいて効果的と言えます。
顧客が自分自身で選んだと思わせることができるので是非活用していきましょう。
また、顧客側として飲食店に足を運ぶ際には、気を付けたいポイントでもあるのでしっかり対策しておきましょう。